下痢・便秘

下痢・便秘は「病気」なの?

「なんとなくお腹の調子が悪い」「便が出ない」「急にトイレに駆け込む」——そんな経験、誰にでもあるのではないでしょうか。下痢や便秘は一時的な不調として見過ごされがちですが、慢性的に続く場合は、体のサインとして受け止めるべき「症状」であり、時には病気の一部でもあります。特に女性は、ホルモンの影響や生活習慣、ストレスなどが腸の働きに影響しやすく、便通の悩みを抱える方が多いのが現状です。

どのようなときに注意したらいいの?

下痢で気を付ける症状は以下のようなものです。

  • 水様性の便が頻繁に出る
  • 腹痛や腹部の不快感
  • 急な便意、トイレに間に合わない
  • 食後すぐに便意を感じる
  • 発熱や吐き気を伴うこともある

急性の下痢は感染症や食中毒が原因であることが多く、数日で治まることもありますが、慢性的な下痢は過敏性腸症候群(IBS)や炎症性腸疾患(IBD)などの可能性もあります。

便秘で気を付ける症状は以下のようなものです。

  • 3日以上排便がない
  • 排便しても残便感がある
  • 硬くて出にくい便
  • 腹部の張りや不快感
  • 肌荒れや食欲不振を伴う

便秘は「出ないこと」だけでなく、「出しにくい」「すっきりしない」なども含まれます。慢性化すると、痔や腸閉塞などの合併症を引き起こすこともあります。

なにが原因なの?

下痢の原因は以下のようなものです。

  • 細菌やウイルスによる感染(食中毒、ノロウイルスなど)
  • 食物アレルギーや不耐症(乳糖不耐症など)
  • ストレスや緊張による自律神経の乱れ
  • 薬の副作用(抗菌薬、下剤など)
  • 過敏性腸症候群(IBS)
  • 炎症性腸疾患(IBD:潰瘍性大腸炎、クローン病)

便秘の原因は以下のようなものです。

  • 食物繊維や水分の不足
  • 運動不足
  • 排便習慣の乱れ(我慢する、時間がないなど)
  • ストレスや不安
  • ホルモンの変化(生理前、更年期など)
  • 薬の副作用(鉄剤、鎮痛薬など)
  • 腸の病気(大腸がん、腸閉塞など)

女性は月経周期や妊娠、更年期など、ホルモンの変動が腸の動きに影響するため、便通の不調が起こりやすい傾向があります。

どのように対処・予防したらいいの?

下痢に対処するには、日常生活の中でちょっとした工夫が大切です。

  • 水分補給をしっかりと:脱水を防ぐため、経口補水液やスポーツドリンクが有効
  • 消化に良い食事を心がける:おかゆ、うどん、バナナなどが適しています
  • 刺激物を避ける:アルコール、カフェイン、脂っこい食事は控える
  • 腸内環境を整える:乳酸菌やビフィズス菌を含む食品(ヨーグルト、味噌など)を摂取
  • ストレスケア:リラックスする時間を持つことで自律神経の安定につながります

便秘を予防するには、以下のようなことを心がけましょう。

  • 食物繊維を意識的に摂る:野菜、果物、海藻、豆類など
  • 水分をこまめに摂取:1日1.5〜2Lを目安に
  • 適度な運動を習慣に:ウォーキングやストレッチが腸の動きを促進
  • 排便習慣を整える:毎朝トイレに座る習慣をつける
  • 腸内環境の改善:発酵食品やプロバイオティクスの摂取が効果的

便秘は「出す力」と「出すタイミング」の両方が関係します。生活リズムを整えることが、腸のリズムを整える第一歩です。

どのようなときに受診したらいいの?

以下のような症状がある場合は、医療機関への受診をおすすめします。

  • 下痢が3日以上続く
  • 血便や黒色便が出る
  • 発熱や激しい腹痛を伴う
  • 便秘が1週間以上続く
  • 排便時に強い痛みがある
  • 便秘と下痢を繰り返す
  • 急激な体重減少がある

特に40歳以上の方や、家族に大腸がんの既往がある方は、便通異常が病気のサインである可能性もあるため、早めの受診が重要です。

検査や治療はどのように行うの?

 医療機関では、以下のような検査が行われます。

  • 問診・視診・触診:生活習慣や症状の確認
  • 血液検査:炎症や感染の有無を確認
  • 便検査:細菌やウイルス、潜血の有無
  • 腹部超音波・CT検査:腸の状態や異常の有無
  • 大腸内視鏡検査:ポリープやがんの有無を確認

治療には以下のようなものがあります。

薬物療法

  • 下痢:整腸剤、止瀉(ししゃ)(やく)、抗菌薬(感染性の場合)
  • 便秘:(かん)下剤(げざい)、浸透圧性下剤、刺激性下剤など

生活習慣の改善:食事、運動、ストレス管理

心理的アプローチ:過敏性腸症候群などには認知行動療法が有効な場合も

薬は一時的な対処には有効ですが、根本的な改善には生活習慣の見直しが欠かせません。

まとめ

腸は「第二の脳」とも呼ばれ、心と体の健康に深く関わっています。便通の乱れは、体の不調だけでなく、心のストレスや生活の乱れを映し出す鏡のような存在です。下痢や便秘は、誰にでも起こりうる身近な症状ですが、慢性化すると生活の質を大きく損ないます。だからこそ、「たかが便通」と思わず、自分の体の声に耳を傾けてみてください。「最近、なんとなくお腹の調子が悪い」「便が出ないのが当たり前になっている」——そんな時こそ、生活を見直すチャンスです。腸が整えば、肌も心も整います。あなたの毎日が、もっと軽やかで心地よいものになりますように。

監修者
山口 敏行 先生
東京慈恵会医科大学
葛飾医療センター
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